歯のない時期、すなわち無歯期は、哺乳が主体の時期です。哺乳は出生時に乳児がす
でに身につけている反射によってなされる行為ですが、この時期の口の形は、上下の顎
の位置関係や口蓋(上あごの歯列の内側の部分)にくぼみがあることなど、母乳やミル
クを吸うのに適した形をしています。また歯のないことも、舌が乳首をとらえて乳を吸
うときに自由に動くのを邪魔しないという点で、哺乳に適しています。
🔹歯のない時期
歯のない時期の口には、母乳やミルクが長時間たまっていることもありませんし、
授乳後の乳の残りは唾液とともに飲み込まれて自然にきれいになります。
ときどき。舌苔といって舌の表面に白い苔状のものがつくことがありますが、これ
は乳児期の一時的なものなら無理に取り除かなくて良いでしょう。熱が出たあとやお
腹をこわしたあとに褐色の暑い舌苔が付いているときは、湿らせたガーゼなどで清拭
してあげましょう。
乳児は、感覚や運動を通じて人や物とかかわりながら発達していくものですが、特
に口での感覚の受け入れは初期から発達します。胎児でも口への刺激に対する反応は
最も早期に発達し、胎生8週頃から見られるという報告もありますが、乳児では、ま
ず出生直後から乳首の感覚を受け入れて乳を吸うという反射行動が生じます。
次に自分の手や指、衣類やタオルを口に持ってきて、なめたりしゃぶったりするよ
うになり、物がつかめるようになると身のまわりのおもちゃに手をのばして口に持っ
てきて、なめたりしゃぶったりして遊ぶようになります。
このようなさまざまな口への感覚刺激は、口のまわりの過敏さをとったり、哺乳の
反射を消退させることにもつながり、哺乳への準備としても、歯ブラシの導入を容易
にするという面でも重要なものです。