🔹口蓋裂児の哺乳の工夫
お母さんの胎内では、完全に母体に依存して育ってきた赤ちゃんも、出生の瞬間か
ら赤ちゃん自身で生きて行くための活動を開始しなければなりません。哺乳という栄
養摂取のための生理的活動もその一つで、出生直後から’反射運動として赤ちゃんに備
わっています。
口唇・口蓋裂という病気は、この栄養の取り込みを行うための口や口の中に異常が
あるわけですから、生まれてすぐから、赤ちゃんがお乳をうまく飲めないという問題
が生じることがしばしば起こります。
口唇裂だけの赤ちゃんの場合は、口唇で乳首を上手に捕らえることが難しい場合が
ありますが、お乳を吸う力や飲み込むことに関してはほとんど問題がないようです。
しかし口蓋裂をともなう赤ちゃんでは、口の中の天井ともいえる口蓋の部分に裂があ
るので、お乳を吸い出すために必要な口の中を陰圧にする力が弱く、乳首を口蓋の部
分に押しあてて、舌で絞り出すことが上手に行えないため、授乳に関する問題が起こ
ることになります。また鼻からお乳が漏れ出たり、溢乳や吐乳なども起こりやすくな
ります。
一般にこれらの問題に対しては、次のような指導や工夫がなされています。
授乳は直接母親のおっぱいからすることが母子関係の面からも望ましいわけです
が、実際はうまくお乳を吸えないことも多いため、搾乳して、飲みやすい哺乳瓶から
与えるようにします。口蓋裂の赤ちゃんのために工夫された特殊な乳首の哺乳ビンも
数種類市販されていますが、一般用の乳首の孔を広くしたり、孔の数を増やしたり、
十字に切り込みをいれたりして吸いやすくして使用することもできます。また、乳首
自体を何回か煮て柔らかくして使うことも良いでしょう。
授乳の姿勢は赤ちゃんを立たせ気味にすることで、鼻漏れや溢乳、むせなどを起こ
しにくくさせ、授乳中に空気をたくさん飲むことも多いので、排気(げっぷ)をこま
めにさせてあげることも大切です。また、一回の哺乳時間は15〜20分程度に¥を目安
として、1回分の哺乳量が少ない時には回数を増やしてあげるようにすると良いでし
ょう。1回の哺乳時間が長くなり、赤ちゃんやお母さん自身が疲れてしまわないよう
にしましょう。
いずれにしても大切なことは、焦らずじっくりと、その赤ちゃんに合った方法を探
し出したり、合うように工夫してあげることです。多くの赤ちゃんは、日が経つにつ
れて、上手に哺乳できるようになりますが、どうしてもうまく授乳できない場合や、
発育が順調でない場合には、医師などに相談してみてください。