6~8か月で乳歯が生え始め、1歳前後で乳歯4本が生えますが、まだ乳臼歯が生えていないため嚙み合せは不安定です。よく「歯並びが受け口のようで心配です」との訴えで受診される親がいますが、この時期では心配ありません。
またもし遺伝子的な要因による受け口(反対咬合)だとしても、1歳前後では
何の処置も行えませんので、あまり心配しないでください。そして乳歯がすべて生えそろう2歳半以降になると、嚙み合わせは安定してきます。
乳歯列期の歯ならびと嚙み合わせ(咬合)は、おもにどうのように決まるかというと、上顎と下顎の大きさ、それに口の機能に関連した筋肉のちからとバランスによるのです。
嚙み合わせを狂わせるものとしては、遺伝子的要因と環境要因があります。
遺伝子的要因とは、両親あるいは祖父母からの嚙み合わせを受け継いでしまっている場合です。これは骨格性不正咬合と呼ばれ、上顎あるいは下顎の骨が大きすぎたり、小さすぎたりすることにより、出っ歯になったり、受け口になったりします。
もう一つは摂食、嚥下運動にともなう舌筋のちから、口のまわりの筋肉(口輪筋、頬筋)のバランス、それに指しゃぶりや頬づえのような悪習癖などの環境要因が大きく関与します。代表的な不正咬合は、指しゃぶりによる奥歯で噛んでいても上と下が開いてしまう開口、頬づえによる奥歯の嚙み合わせが反対になる後方交叉咬合などがあります。
この環境要因による不正咬合は、早い時期でしたら悪習癖を止めるだけであるいは筋訓練だけで治ります。また遺伝子性の不正咬合も早期に対応することで、治せたりひどくならないように抑制できますので、専門医に相談してください。
機能的で審美的に健康な乳歯の歯並びは、健康な永久歯列を作るうえで必須です。乳歯をう蝕にしたり、抜歯をしたままに放置すると必ずといっていいほど永久歯列で不正になっていますので「乳歯はどうせ抜け替わるから」と安易に考えないでください。